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■変形性膝関節症にステロイド注射の意義なし
運動療法のみで疼痛やQOLは改善、生食注射との比較試験で判明
変形性膝関節症の患者に対し、運動療法の実施前にステロイドの関節内投与を行うことで、炎症や疼痛を和らげ、運動療法時の苦痛を減らす──。運動療法との相乗効果が得られると考えられてきた治療だが、実は意義がないかもしれないことが、デンマークで行われたプラセボ対照ランダム化比較試験から分かった。プラセボとして生理食塩水を関節内に注射した患者との比較で、12週間の運動療法後の痛みや運動機能には、全く差がなかったという。デンマークCopenhagen 大学のMarius Henriksen氏らが、JAMA Internal Medicine誌電子版へ2015年3月30日に報告した。
関節炎の中では最も多く見られる変形性膝関節症は、痛みと障害を引き起こす。運動療法は疼痛の軽減と、機能とQOLの向上をもたらすことが示されている。一方で、痛みと炎症を軽減するための薬物療法としてはステロイド関節内注射が推奨されており、運動療法との併用が好ましいとされるが、併用により相乗効果が得られるかどうかは明らかではなかった。
著者らは、運動療法開始前の変形性膝関節症患者にステロイド関節内注射を行う試みの利益を評価するために、二重盲検のランダム化試験を、変形性関節症外来で2012年10月1日から2014年4月2日まで実施した。
試験には、X線画像により臨床的な変形性膝関節症であることが確認され、膝に炎症があることを示す症状が認められ、歩行時に膝に痛みがあり(0-10までのスコアで表すと4を超える疼痛)、BMIは35以下で、40歳以上の患者100人を登録。ランダムに1対1で、関節内にリドカイン塩酸塩に溶解したメチルプレドニゾロン酢酸エステルを1mL(メチルプレドニゾロン酢酸塩を40mg含む)注入するステロイド群と、生理食塩水を1mL注入するプラセボ群に割り付けて、超音波ガイド下で痛みの強い方の膝に注射した。注射の2週間後、理学療法士の指導下で、全ての患者が週3回12週間の個別化運動プログラムを実施した。
主要評価項目は、試験参加時(ベースライン)から14週後(運動療法終了時)の疼痛スコアの変化。疼痛スコアとしては、膝損傷・変形性関節症アウトカムスコア(KOOS、スコアは0-100ポイントの範囲で、高スコアほど転帰が良好)の疼痛サブスケールのスコアを用いた。
副次的評価指標は、(1)疼痛以外のKOOSサブスケール(症状、日常生活機能、運動とリクレーションの機能、膝関連QOL)のスコアの変化、(2)身体機能と炎症の客観的な評価(30秒間スクワット回数、痛み無しにできたスクワット回数、スクワット中の疼痛強度、四頭筋と膝窩筋の筋力、6分間歩行距離、空腹時血漿中のインターロイキン6濃度、造影前と造影後のMRI画像に基づく滲出と滑膜炎の状態)──などに設定した。転帰はベースラインと2週間後(運動療法開始時点)、14週後(運動療法終了時点)、26週後に評価した。分析はintention-to-treatで行った。
試験に登録された100人(平均年齢は63.4歳、女性が61%)は、50人がステロイド群に、50人がプラセボ群に割り付けられた。試験を完了したのはそれぞれ45人と44人だった。
その結果、14週時点の疼痛スコアの変化幅(平均値)は、ステロイド群が13.4ポイント(SEは1.8)、プラセボ群は14.8ポイント(SEは1.8)。差は1.2ポイント(95%信頼区間-3.8から6.2)で、有意な差とはならなかった(P=0.64)。
日常生活機能やQOL、スクワット回数やスクワット中の痛みなど全ての副次的評価指標に関する比較も行ったが、注射から2週間後、運動療法終了後、半年後という3つの時点では、どの項目も有意差を示さなかった。結論として、運動療法開始前に、疼痛のある膝に40mgのコルチコステロイドを関節内投与しても、2週間後から運動療法を実施する場合は相乗効果は見られないことが明らかになった。
原題は「Evaluation of the Benefit of Corticosteroid Injection Before Exercise Therapy in Patients With Osteoarthritis of the Knee: A Randomized Clinical Trial」、概要は、JAMA Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2210887
21世紀健康館 牧野