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■変形性膝関節症には運動介入がやはり有益
下肢変形性関節症を有する患者への運動介入の有益性について、システマティックレビューとネットワークメタ解析の結果、2002年以降のデータで、そのエビデンスが十分に蓄積されていることが示された。英国・キール大学のOlalekan A Uthman氏
らによる報告で、「さらなる試験を行っても結果は覆りそうもないようだ」と述べるとともに、「筋力、柔軟性、有酸素能を高める複合的アプローチのエクササイズは、下肢変形性関節症の治療に最も効果があるようだ。なおエビデンスは変形性膝関節症患者の試験によるものが大部分を占めていた」とまとめている。BMJ誌オンライン版2013年9月20日号掲載の報告より。
運動介入効果のエビデンスの蓄積を検証
研究グループは、下肢変形性関節症患者の疼痛軽減と機能改善において、運動介入が非運動介入よりも有効である、と結論するための十分なエビデンスがあるかを調べること、またどのような運動介入が効果的かを比較することを目的とした。
Medline、Embaseなど9つの電子データベースをソースに、それぞれの発行開始年から2012年3月までに発表された文献を検索した。適格試験は、膝または股関節の変形性関節症を有する成人を対象に、運動介入と非運動介入、または異なる運動介入を比較した無作為化試験 とした。主要アウトカムは、疼痛強度と機能制限であった。
2人のレビュワーが試験の適格性と方法論の質的評価を行った。また、運動介入について入手したエビデンスが、信頼性があり決定的であるかを調べるために、試験の逐次解析を行った。治療効果への直接的(試験内)エビデンスと間接的(試験間)エビデンスの統合にはベイジアンネットワーク・メタ解析法を用いた。
筋力+柔軟性+有酸素能の複合アプローチが疼痛軽減、機能改善に有効
解析には、包含基準を満たした60試験(膝44件、股関節2件、混在14件)、12の運動介入、患者8,218例が組み込まれた。試験は1989~2012年に発表されたもので、最長追跡期間は4週から79週(中央値15週)であった。試験の実施地域は米国(17件)、英国(9件)、オーストラリア(8件)が大半を占め、参加者はほとんどが地域住民だった。
逐次解析の結果、2002年以降のデータで、運動介入が非運動介入に対して有意にベネフィットがあるという十分なエビデンスがあることが示された。
12の運動介入について、非運動介入と比較した疼痛強度に関するネットワーク解析の結果、筋力のみ(10cm視覚アナログスケールでみる疼痛強度が-2.03cm)、筋力+柔軟性(同:-1.26cm)、筋力+柔軟性+有酸素能(同:-1.74cm)、水中筋力(同:-1.87cm)、水中筋力+柔軟性(同:-1.87cm)の運動介入が、有意に有効であったことが示された。
また、筋力+柔軟性+有酸素能の介入は、機能改善についても非介入と比較して有意に有効であった(標準化平均差:-0.63、95%信頼区間:-1.16~-0.10)。
参考文献
Uthman OA et al. Exercise for lower limb osteoarthritis: systematic review
incorporating trial sequential analysis and network meta-analysis. BMJ. 2013
Sep 20;347:f5555.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24055922
21世紀健康館 牧野