疲労回復の空間づくり
科学的な根拠がある脳疲労を軽減するための実践法として
まずは、「睡眠」、そして「食事」について紹介しました。
次に「環境」について考えてみたいと思います。
2004年から厚生労働省、農林水産省と各研究機関などが
産官学連携で「森林セラピー」の効果を科学的に検証し、
予防医学に役立てようとする研究がおこなわれています。
脳疲労を軽減するためには、自律神経の副交感神経を優位にして
脳と身体の活動を急速モードにする必要がありますが、
これまでの研究で、森林の様々な要素が副交感神経を優位にすることが
わかってきています。
実際、森林を散策する、森の奥にある滝つぼにいくなどすると
疲れが癒され、リフレッシュする感覚があると思います。
森に癒しを求める「森林浴」では樹木が発している香りの成分である
「フィトンチッド」にリラックス効果があると言われています。
また、滝つぼやビーチのような水際では、水の細かいしぶきから
「マイナスイオン」が発生しており、このマイナスイオンにも
疲れを癒してくれる作用があるといわれています。
しかし、実は、「フィトンチッド」にも「マイナスイオン」にも
疲労を軽減する作用はみつかっていません。
実は、森林の「ゆらぎ」が脳疲労を癒してくれる正体だったのです。
木漏れ日が輝き、そよ風が流れ、川のせせらぎや鳥の鳴き声が耳に届く。
これらはすべて「ゆらぎ」の特性を含んでいるのです。
「ゆらぎ」とは、規則性がありながらもそのパターンが必ずしも一定ではなく、
時間とともに変化していく現象のことを指します。
質や量が一定ではなく、時間が経つにつれて強くなったり弱くなったり、
または大きくなったり小さくなったりというような現象です。
ここで強調しておきたいのは、ただでたらめに不規則な形で変化するのではなく、
あくまでもその変化の中に「規則性がある」という点です。
つまり、規則正しい状態と、不規則な状態が混ざり合っている状態です。
わたしたちの身体もつねにゆらいでいるため、
自然の中のゆらぎが心地よいと感じます。
ということで、日常の生活の中に「ゆらぎ」を取り入れることで
脳疲労は軽減することができるのですね。
いまは、「1/fのゆらぎ」として音響が販売されていますし、
窓を開けて風や光を取り入れてみたりすることもできます。