☆成長ホルモン その6 ~成人成長ホルモン欠乏症における成長ホルモン治療の効果 つづき☆
前回のつづきです
5.心血管系と脂質
成人成長ホルモン欠乏症ではBMI
(Body Mass Index:肥満度の指標)が高く
総コレステロール血症、
高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)血症
低HDLコレステロール(善玉コレステロール)血症
高中性脂肪血症、更には高血圧の合併頻度が高く
動脈硬化も進行しており、心機能の低下も認められます
成長ホルモンの投与により脂質系の有意な改善を認め
心機能は改善し、動脈硬化に対しても有効であるとの報告されています
6.エネルギー代謝
成人成長ホルモン欠乏症患者では基礎代謝が低下しているとの報告が多く
成長ホルモンの投与により基礎代謝量が上昇する事が知られています
これは単に除脂肪体重の増加のみならず
甲状腺ホルモンのT4のT3への変換の促進脂肪酸化促進、蛋白合成促進
などの成長ホルモンによる効果と考えられています
7.糖代謝
成人成長ホルモン欠乏症では空腹時インシュリンレベルが高く
インシュリン感受性の低下が確認されています
この原因として成長ホルモンの減少による内臓脂肪の増加が考えられます
内臓脂肪はTNFα(Tumor Necrosis Factor α腫瘍壊死因子α)
等のサイトカインを分泌し
インスリン抵抗性を引き起こすと考えられています
またインスリン抵抗性に伴ない、グリコーゲン合成酵素系の抑制が起こり
肝グリコーゲンの貯蔵量が減少することが知られています
成長ホルモン投与開始1~6週間はインスリン抵抗性はむしろ増強しますが
これは糖代謝が成長ホルモンにより抑制された結果と考えられています
しかし3ヶ月を越えると糖代謝が正常化しますが
これは成長ホルモンにより内臓脂肪が減少した事により
インシュリン感受性が改善したと考えられます
8.皮膚
成人成長ホルモン欠乏症の症例は皮膚は薄く
発汗機能も低下しており、このため熱放散能も低下しており
運動機能低下の一因と考えられています
このような症状も成長ホルモンの投与により改善する事が報告されています
9.生活の質(Quality of Life)
成人成長ホルモン欠乏症では精神的に活力が低下しており
情緒面でも不安定で、性的関係や人間関係においても問題が多く
社会的に孤立する傾向にあります
多くの調査において成長ホルモン投与が
これらの精神生活における質の改善を促す事が報告されています
10.結論
老化に非常に類似する成人成長ホルモン欠乏症は
成長ホルモン補充療法に良好に反応し
肉体的及び精神心理面を含む諸症状の改善を認めました
この事実が“成長ホルモン投与が老化の諸症状を改善する”
という“抗加齢療法”の理論的背景となりました
つづく・・・
次回は、成長ホルモンの投与方法・副作用
成長ホルモンを使用した『抗加齢療法』の問題点
などについてご紹介します
【身体のトリビア】 ろく でした